す。




<テレキャスターというエレキ・ギター #8>

今回は弦高という、よりマニアックな細かい話題です。文字通り弦の高さですが正確に言うと、これはギターネックの指板に埋め込まれている金属製のフレットの表面から弦の下側までの距離です。

この距離にこうでなくてはならないという決まりは何もなくて、弾く人それぞれの好みなのですが、時々他の人のギターに触らせてもらうと、弦の高さは千差万別です。ガチガチに高くて弦を押さえるにも力が必要で、これでよく弾けるなと思う場合もあれば、非常に低くてベンディング(チョーキング)をしたくても左手の指が弦にひっかからず、これもよく弾けるなと思う事もあります。

初めてモズライト・ギターに触った時も、あまりの弦高の低さにうまく弾けませんでした。フレット自体が薄くて指板から弦までの距離が極端に近いのがモズライトの特徴です。
僕はサステイン (音の伸び方)を長くするため、全てのテレキャスターのフレットをジム・ダンロップ社製の太いタイプに替えてあるので、それに慣れていて薄いフレットは大変苦手なのです。

僕が世話になっているリペアマンから聞いたところによると、12番フレットの金属表面から1弦側1,5mmぐらい、6弦側は2mmぐらいを標準にして、中側は指板の曲面(R . . .アールと呼びます)に合わせて調節するそうですが、これは楽器メーカーが楽器店に卸す前にギターを調整する時の平均的な数値とのことです。これは物差しで測る大変細かい作業ですが、僕の場合はアンプを通して弾いた音の感じで少しずつ調節してゆきます。あとで測ってみるとやはり大体ですが上記のような結果になっています。

この高さだと弦を弾いた時の振動幅で弦が少しフレットに当たって、アンプから出る音に少しだけ金属音か混じり、いわゆるビりつく感じの音になりますが、歪ませて弾く時はそんなに気になるものではありません。
僕のように歪ませずにクリーン・トーンで弾く場合は微妙な音も気になる場合があります。

ネックが反ってきてこの”ビりつき”が激しくなることがありますが、これはネックが水平よりもお腹が出て来た感じのいわゆる”逆反り”の場合で、フレットの金属面が弦に近づき過ぎてしまっている状態です。

いつの間にか弦高が高く感じるようになっていると、これはたいがいネックが下にへこんだ感じの”順反り”です。こういう場合はギターのネック内部にある補強用の鉄の棒(トラス・ロッド)をいじってネック自体を調整するのですが、僕にはちょっと難しい作業なのでリペアマンに頼みます。僕が自分で調整するのはブリッジにある弦を載せたサドルの高さで、ネック自体に問題がない場合です。

弦高はどのギターでも共通の話題ですが、ここでやっとテレキャスターに関係する話になります。
テレキャスターの音のことは前に何度も書きましたが、リードはパキパキ、リズムはジャキジャキなどと表現されることが多いです。その音とこの”ビりつき” は関係があると最近思うようになりました。このビる音が気になるかならないかの大変微妙な高さに弦高を調節すると、メロディーをちょっと強く弾けばバシバシ(またはパキパキ)という金属音が混じって、リズムを弾くとジャキジャキという感じで、よりテレキャスターっぽい音になると僕は感じています。これは本当に好み次第ですから、自分独自の音を創るひとつの要素になります。

これはテレキャスターに限らずですが、どのメーカーのどのモデルで何のアンプを使って、シールド・コードは何を使用して、弦はどこのメーカーのどんな太さを選ぶか、エフェクターは何を通して、ピックはどんな厚さのものにして(最近僕は分厚い木製を使用しています)、どんな強さでピッキングするか、どう思い入れて弾くか(いわゆる歌心)、そして今回の話題の弦高はどう調節するか、他にも項目はあるはずですが、こういうことの集合でその人の個性が音に現れてくるのだと思います。

だから憧れのギタリストと同じ音を出したいと思い、同じモデルのギターを手に入れるのは最初のほんのワン・ステップで、本当に同じ音を出すには上記のことをすべてクリアしなければならず、これは事実上不可能なことです。しかしその音を出したい一心で色々探っているうちに、自分のギター・ヒーローの音に似てはいるが、これはこれでその人ひとりしか出せない、ワン・アンド・オンリーのサウンドになるのではないでしょうか。

僕は今持っている6本のテレキャスターの弦高を上記の理論で慎重に調整して気に入った高さにしましたが、気持ちサステインが短くなったような気もします。これは以前より弦がフレットに触れるの高さなので致し方なく、音の感じを取るかサステインを取るかの選択になってしまいます。

現在はこの音が気に入っているので、しばらくはこのまま弾いてみて、そのうちもっとサステインが欲しくなったら調整し直してみようか、ギター別に色々な弦高にしておこうか、などと考えていますが、聞いている人には多分全くわからないことでしょう。

しかしライブの後で『良い音出てましたね』などと言ってもらえた時に、弦高の調整が良かったのかな?(これはお金はかからないけど)、新しいシールド・コードのせいかな?(だったら高いお金を払った甲斐があったな)、などと考えてうれしくなるのです。

2011年3月1日


(テレキャスターに関する話題を、ぜひBBSに寄せてください。)




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